EPUB電子書籍のDRMその2
電子書籍のサービス終了や停止、死屍累々。
@ryou_takanoさんのブログ記事(2014/5/29)
「ヤマダイーブック閉鎖時の対処を記憶に焼き付けるとともに「事前の救済策」でユーザーの信頼を勝ち取ろう」
https://www.wildhawkfield.com/2014/05/Closure-of-Yamada-eBook.html
が、まとまっていてわかりやすい。
この中で取り上げられているケースでは、救済処置(購入した本の引き継ぎ・購入分をポイントで還元)はそれなりにやってるみたいだけど。このあたりのドタバタがSNSやニュースで流れるたびに
「なんだ電子書籍ってサービスが終わったら読めなくなんのかよ」
ということになる…ってもともと電子書籍はDRM(デジタル権利管理)によって販売サイトと結びついている。ユーザーは本を買うのではなくて「読む権利」を買うだけなので、乱暴に言ってしまうと長期間の貸本屋で本を借りるようなもの。この手の話はさんざん既出。
(「これだから電子書籍は紙の本と違って」うんぬん、と言われ…そこ比較するところじゃないよなあ)
んじゃ、どうするのがいいの?というのもすでにあちこちで語られている。
実現可能かどうかはともかく。
・電子書籍もすべて一意のコードで管理する
・書店横断のDRMにして買った本のダウンロードはどの店でもできる
というのが理想かなあ。
(誰が本のコード管理するのか、購入履歴の管理はどうなるのか、配信コストの負担をどうするのか、…などなど思いつかないけど)
そもそもDRMに関して、わたしは「不要論」
ユーザーに不便を強いるだけのシロモノだし、しょせんいたちごっこでいつまで続けるの?と思う。
…なんだけど、前にも書いたようになりすましやパクリなどの電波なひとに対応するのは大変。弁護士だ裁判だともろもろひっくるめたコストを考えると個人だとやってられないので、コピーガードとしてのDRMは残念ながら現状はまだ必要。
という既出のネタでの長い前書きがやっと終わって、今日のネタは以前書いた記事の続き。
「EPUB電子書籍のDRM」 (2013/1/15)
「EPUB3にメールアドレス埋め込み」 (2013/1/16)
ソーシャルDRMとかソフトDRMとか言われるもの。
・購入者のメールアドレスをEPUB3ファイルに埋め込む。
・コピーが流出したら「おいおい、それオレが流したってバレちゃうじゃん」というストッパーにする。
EPUB3はZIPファイル。解凍して中を覗けばメールアドレスが埋め込んであるところがわかってしまうので、個人レベルでできることなどネタにしかならないのは重々承知で。
(電子透かし(表紙画像などコピーしても簡単には消えないようにメールアドレスを埋め込む)がいいのかと思いつつ難しそうなのでパス)
・メールアドレスを書誌情報ファイルに書き込む
・本文の扉や奥付、スタイルシートに書き込む
のが前回までのあらすじ。
これにメールアドレスを暗号化した文字列を入れておく。発行したメールアドレスを管理する必要はあるけど、暗号化されたメールアドレスと登録管理しているメールアドレスを照合すればどういう経路で流れたのかがわかる。
もちろん、暗号化されたメールアドレスを削除されたらそれで終了だけど、ナマの可読性のあるテキストより全然わかりにくい。EPUB3ファイルに関して熟知してるひとがみれば一発だけど、そこまでするなら買った方が早いと思うひとの方が多いだろう。
どこかで機能追加してみるかな。
ここんとこ「電子書籍+DRM+解除」が検索ワードに増えてきてる。
それもこれも「サービスが終わったら読めなくなるってか!?だったらハードディスクに保存しよう!」だろうなあ。
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ibooks新刊!『水に咲く花』
『水に咲く花』(日野裕太郎・ハルノブ)[iBooks版]
kindle版『水に咲く花』https://t2aki.doncha.net/?id=1385516659 と同じです。
文庫本サイズ(39字x18行)で42ページほどのファンタジー中編です。
*****
羽は広がり、次第に姿を変える。
肩胛骨を芯に、産毛に似るという羽は菌糸のように根づくのだ。羽はかたちを変え、やがて大輪の薔薇が咲くことになる。身体中に。全身の皮膚という皮膚に。
薔薇は広がり——全身を埋め尽くすと、今度は鱗に変わる。
変容だ。
患者は水の住人になるのだ。彼らは遠く離れた塩の湖に住む資格を得るのである。
彼らは陸ではうまく呼吸ができなくなっていく。あえぎ喘鳴をくり返すころ、脇腹に亀裂が生じる。亀裂はえらになり、口腔と肺での呼吸機能はすみやかに失われる。彼らは水中でのみ呼吸が可能になり、人語が曖昧になるのだ。
肺が機能を失い、声帯が瞬く間にも衰退する。
発音は聞き取りづらく、語るものは言語とはほど遠いものになる。旋律に似て、陸の生きものには鼻歌に聞こえるようになるという。
塩水で暮らすものとなりながら、陸を恋慕って彼らは浅い岸辺を往復するそうだ。その場から離れ難く、延々と波打ち際にとどまろうとする——陸に可能な限り近い場所を漂い、彼らは歌い続けるとも聞く。
僕はコリンを殺したら、ノイノイに会いに湖に行く——その夢想は、何故だかとてもやさしかった。
*****
iTunes Storeで
「日野裕太郎」で検索いただくか
「SF/ファンタジー > ファンタジー > 日野裕太郎 & ハルノブ」カテゴリからご覧ください
Mac版iBooksのスクリーンショット。
最終ページにはkindleなどと同じく評価やソーシャルボタンがついています。
※ kindleと違って、同じ著者の作品が並ぶのがありがたいなあ。
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勝負どころの話
ひとつ前の雑記でkindleとibooksで使う画像について書いたところ、今までのものを変えなきゃいけないのは大変、という反応が。
なんでもそうだけど「勝負どころ」というのがあるはずで。
画像のサイズ、縦横比を計算してデザインしてそこを売りにしているのであれば、デバイスの表現力やストアの画像に関するレギュレーションが変わったら、既存のものも都度作り直すべき話。そうじゃないのであればそのままでOKということ。
昔、エロ漫画雑誌を作っていたんだけど。
エロで都条例にひっかかるならしょうがないけど、暴力描写犯罪描写で都条例にひっかかるのは論外だった。というのと同じこと。エロの部分は勝負するけどそれ以外で危ない橋は渡らない。それだけの話。
なんでもかんでも100%、全力投球の完成度はかっこいいけど、それで物事が先に進んだことはない。
ここは勝負どころだから手抜きはしない・勝負しよう、というのと、ここ勝負するとこか?テキトーで流そうぜと手抜きの区別は必要だったような気がする。
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KindleとiBooksの画像サイズ縦横比
よく忘れるので自分メモ。
最近ウチで作ってる電子書籍の画像サイズ。
・kindleは16:10なので、2500x1563
・ibooksは4:3なので、2048x1536(※ 上限320万画素)
どちらもカバー画像の解像度は72dpiにした(kindleのリフローで使う本文画像は300dpi以上が推奨となっている)
([05/28 21:18:27] kindleの現状はこれでも足りないはず。2560x1600だという記述もある。要は縦横比16:10がポイントでサイズはデバイスで違うのでできるだけ大きいのを準備しようということ)
でも、固定レイアウトはkindleもなんとなく4:3。
知り合いに見せてもらったipad miniが漫画端末としてあまりに奇麗で快適なので強く印象に残ったからかも(漫画を読みたいんですけどどれがいいですか?と聞かれたら問答無用でipad miniをオススメする)うちにあるNexus7(2012)のkindleアプリで確認したけど4:3で上下の余白はあまり気にならなかった…かもだし。
今日ibookstoreで公開になった三毛猫野良猫写真集はすべて2048x1536。
kindleの三毛猫写真集はカバーが1867x1400。本文は1270x900。でもこれは去年冬の時点で作ったもので、今だともっとサイズをあげなきゃいけないっぽい。
ただ、端末やアプリの性能向上でサイズが大きくなると画像サイズもでかくなるいたちごっこでキリがない。
本書は122枚の画像で、EPUBファイルのサイズが186M(kindleの猫写真集はほぼ同じ枚数で33M)kindleも最近ファイルサイズの上限が引き上げられたけどダウンロード・回線状況が大変になるなあ(動画ほどじゃないだろうけど)
iBookstoreはこちら→ 「MIKE and Neighbors」
120 Pictures of Japanese Bob Tail Cat.
Here is no artistic photograph.
Here is everyday life of cats and neighbors.
It is blessing to all cats !
(今日時点、定価100円)
ちなみに本書、kindleの三毛猫写真集収録の写真を中心に新規の写真を入れたもので写真はかなりダブっている。
新規の写真はもちろん、各々写真のサイズをiBooksに合わせて大きくしてトリミングを変更、左綴じにして言語をenにして、世界各国51エリアで販売中(ウチのibookstoreの小説本は日本だけ配信にしている)
英語版にして世界制覇を狙う。
さらにちなみに、本書は例によって例のごとく当サイトの 「コミックスなど固定レイアウトEPUBを作る」 で作った固定レイアウトのEPUB3ファイルをそのまま登録に使った。
1ページ1画像の漫画や写真集はこれでイケるなあ。
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
KDPセレクトから他ストアへも
KDPセレクトというkindle専売はいろいろとメリットがあって、前もさんざん書いたようにこの2点。
・出版者のマージンを70%に設定できる(専売じゃない場合は35%)
・キンドルオーナーライブラリに登録して読者に無料レンタルで提供できる
マージンは多いほうがいいに決まってるけど、売れなきゃゼロ。0.35を掛けても0.7を掛けてもゼロはゼロなのであまりこだわるところじゃないように思う。
それよりこの無料レンタルが悩ましい。
kindleは期間限定の無料キャンペーンはあっても、無料販売ができない( 「KDPの無料販売について問い合わせてみた」 )
最初の頃三冊ほど無料キャンペーンをやり、去年の暮れにも猫写真集で無料キャンペーンをやった。猫写真集はキャンペーン期間中に900弱ダウンロードしていただいたし、他の三冊も有料で置いている期間を合わせたよりもダウンロードしていただけた。
知ってもらう手段として「無料」は効果があるように思う。
でもやっぱり有料コンテンツがある日突然意味不明の理由で無料になるのは変だと思うし、無料なら最初から無料のコンテンツを用意したい(なので基本的にウチはもう有料コンテンツを期間限定で無料にする予定はない)
この懊悩煩悶を解決してくれるのがKDPセレクトの無料レンタルだと思っていて、期限内に返さなきゃいけないというプレッシャーが読んでもらうモチベーションになる。知ってもらうだけじゃなくて読んでもらえるかな、と。
そんなこんなの上下左右右往左往の錯乱状態なんだけど。
楽天koboが年内にもKWLを始めるという噂もあり、iBookstoreに置いてある無料コンテンツは少しずつではあるけど動きがあってたまに連動してか有料コンテンツも動く。
グズグズ考えててもしょうがないので、いくつかピックアップして、KDPセレクト(90日間)の自動更新を切って他ストアへも並べることにした。
(って、ちょっと驚いたことに楽天koboにおいた無料コンテンツが、どうやって見つけてもらってるのか不明だけど、それなりにダウンロードされてるんで、KWLがきたらスグ棚取りに走ろうという目論み。とらたぬ)
周知、宣伝…プロモーションというか、毎度毎度ざわつく話題ですなあ。
↓ちなみにこちらで無料コンテンツを並べてます。スグに読める掌編ですので通勤通学のお供に!
「ibooks・googleブックス・楽天koboの無料頒布」
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ヨタ:名誉か金かこの世のすべてを解き明かす
人類の昔からの永遠の・定番のテーマ。
創作文芸同人誌や電子書籍の個人出版にも当然当てはまる。
たぶんこのマトリクスがこの世のすべて。
・プレイヤーで言えば
A+Cの右端は出版社
A+Bの上端が著者
・ジャンルで言えば
Aの右上はエンタメ系ジャンル
Bの左上は純文学ジャンル
Cの右下はビジネス書や自己啓発本ジャンル
・作品の扱いかた
Aの右上は商業誌
Bの左上が無料配布
…んと、Dはおいてみただけ。
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