EPUB電子書籍のDRM
最近のDRM(デジタル著作権管理)について気になったのでどんなものか調べてみた。
2年ちょっと前に在籍していたダウンロード配信の会社では、コンテンツにマイクロソフトのDRMをかけていた。その頃の生半可な知識を引っ張り出すと。
・コンテンツの暗号化が大前提。
・DRMでは、デバイスごとに配信を許可する、再生を許可するなど、かなり細かく設定できる。
・DRMサーバーで管理しており、コンテンツを再生しようとするとハードウエア構成や再生回数などをチェックして必要ならDRMサーバーに問い合わせて、OK NGの判定を仰ぐ。
という概略で合っていると思う。
DRMはコピープロテクトのためだけのものではなくて、コンテンツ配信・再生に関してハードウエア構成など突っ込んだ細かいところまでコントロールするためのもの。
DRMで管理されたコンテンツは、購入者はコンテンツを見る権利を買うのであって、コンテンツそのものを購入して自分のものにするわけではない。
「炎上で露呈…グーグル、アマゾンでもユーザーに所有権ない?」https://biz-journal.jp/2012/12/post_1225.html などと、何を今さら・煽ってんの?という呆れた記事も去年暮れにはあった。
ファイルの移動もままならず、再生に制限があったりするので、購入者、ユーザーは不便を強いられる。コンテンツホルダー、提供者に対する言い訳にされてるだけにしか思えない状況「うちに預けてもらえればDRMというコピーできない仕組みもありますから、安心してください」
わたし自身はDRMなんて不要だと思っているし、また、ダウンロード配信の会社の頃にアメリカの話として、動画コンテンツにDRMをかけないで(その分多少値段を上げて)販売する方向になっている、ということだった。コピーされて流出はあるんだろうけど、それでも売上は増えているとのこと。DRMというか暗号化されたものは、そのうち解読されるので、そのイタチごっこずっと続けるわけ?とも思った。
DRM必須とDRM不要の中間、落としどころのようなものが、最近ではソーシャルDRMと呼ばれている。一時「電子透かし」などと呼ばれていたのと同じかな。
2年前ぐらい前に、自サイトで電子書籍(PDF)のダウンロード販売をした時の記事
「電子書籍にDRMは不要じゃないか」
購入者のメールアドレスをPDFに埋め込む、というもの。そのPDFがコピーされて流出したら、誰がコピーして流したかがわかる。
「コピーしたらおれがやったってバレちゃうじゃん」と心理的なハードルをもうける。
PDFに関する知識があれば埋め込んだメールアドレスはコピーする前に外そうと思えば外せるんだけど、面倒くさいしそこまでするなら買っちゃった方が早いと思わせればいい。値段も購入ステップも含めて。
で、EPUBのDRMってどうなの?と検索してみたら。
Adobeやkobo、Kindleは独自のDRMをコンテンツにかけている。EPUBの仕様として、書誌情報は暗号化してはいけないことになっているので、コンテンツ=本文を暗号化している。対コンテンツホルダーのことがあるのでしかたがないところか。趨勢的にはAdobeのDRMが広く使われている、らしい。
ウチのサイトで(販売するつもりはないけど)EPUBのダウンロードを提供したいと思ったら、できることはダウンロードしたユーザーのメールアドレスなりの埋め込み程度。ただ、PDFと違ってEPUBはzipを解凍したら単なるHTML=テキストファイル。特に専用のアプリなど必要なく、エディタで開いて書き込まれているメールアドレスを検索して削除して回れば済む。
ちょっと簡単すぎる。
ここをもう少し面倒くさくできないものか、調べる。なにかアイディアがあったら、サイトに実装しよう。
[01/15 18:10:15] 追記。
contentプロパティに数値文字参照に変換したメールアドレスを埋め込むとスグには分からないかも知れない…でもスタイルシートを覗かれたらそれで終了のお知らせ、か。全ページに直接埋め込む方が、探すのが面倒になるのでちょっとは有効かもしれない。
他人の文章や絵、漫画を、そのまま自分が書いた・描いたと主張して販売するような電波がいなけりゃ気にすることもない。でも、実際サイコさんはいるし、そこで弁護士に相談となるといろんなコストがかかるんだよね。なので少しハードルはもうけておくべきだろうと思う。
[01/16 13:57:50]追記。
実際に埋め込んでみた 「EPUB3にメールアドレス埋め込み」
[2014/10/07 13:23:50]追記。
「かんたんEPUB3作成easy_epub」 にソーシャルDRM(っぽく)を実装したのがこちら 「メールアドレス埋め込みを機能追加」
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
kindleで個人出版するメリット
kindleストアにKDPの個人出版の本があっという間に並びだした。電子書籍をEPUB3で作るのは簡単だし、kindleのKDPへの登録も簡単。KDP経由の作品を抽出する方法がわからないのでなんとも言えないが、新着の半分近くはKDPっぽい(?)本。
多士済々玉石混淆カオスな状況になりつつある。早くもせっかく出した本が埋もれて見つけにくくなってきた(せめて登録カテゴリをどうにかして欲しい)
それでもKindleストアに本を並べる。
以前書いた「amazon、kindleストアの販売力」https://t2aki.doncha.net/?id=1357212714 のタイトル通りアマゾンの販売力すげーということ以外に。
なんせ、出版は不況のまま。
書店の数が年々減っていて、去年暮れの時点では14000店程度まで(最盛期で22000店ぐらい)減っているし「出版社、書店、取次不況の実態…新刊の7割が返品、コンビニでも雑誌売れない」https://biz-journal.jp/2013/01/post_1263.html なんて記事が今年早々話題になるほど、出版の業界不況は先が見えない。
取次ぎが求めるのは部数が出せて、売れる商品。無名の新人作家の作品など、相手にされない。本が出せない(仮に出せたとしても、書店の現場で「誰これ?知ってる」「いや全然」「どう?」「どうかなあ」「じゃあとっとと返品して棚空けよう」)
新人賞は出版社がそんな無名の新人を売るための販促ツール。これは当然ながら競争率が高い。それにたとえ小説の中身が十分に商業流通に乗せるレベルだとしても、その出版社に合う合わないがあってマッチしなければ受賞はない。
(以前なら多少合わなくてもつき合う余裕があったかもしれないけど、この不況、部数を確保するため・売るために即戦力が欲しい。よね)
個人が本を出すためのクチが狭くなっていって、出版業界も既存の売れスジを消費しつくしたらどうするんだろうと思う。出版社の存在理由には「新人を次々と送り出すため」というのがあるはず。
市場規模なんて単語が合うのか疑問だけど「「オタク」市場に関する調査結果 2012」https://www.yano.co.jp/press/press.php/001002 というレポートがある。
PDFによると、同人誌市場は2010年700億円→2011年690億円→12年は716億円(予想)の市場規模とのこと。いや、実際にコミケなどに参加しても年々活気は上がる一方に感じる。出版社が新人を出せないなら、個人が自分で突破する。その方法として同人誌、同人誌即売会はこれからも伸びていく。
ただ、同人誌は手に入れる場所が限られている。期間が限られている。
この雑記帖で100回ぐらい同じことを書いてるけど、kindleストア、電子書籍は、思い立ったらその場で購入その場でダウンロードその場で読めることが最大のメリットだと思ってる。読者を繋ぐため・自分の読者を育てるために有効に使える。
埋もれて見つけにくくなるというのも、同人誌即売会など別の動線を活用して解消できる。たぶんkindleストアのKDP野放し状態は、ストアにきてから探す手伝いもするしレコメンドメールで集客もするけど、動線・集客は自分でも頑張ってね、お互い様だからね、ということだろう。
ここは素直に、個人でも頑張れる土壌作りに感謝ということ。どんどん参入・参加していって、個人作家個人出版が常態になれば本を読む環境や意識が変わってくるだろう。
紙は自ら救うものを救う。というやつだ(なんのこっちゃ)
[01/15 01:10:57] 追記。閉塞でこのブログを検索してみたら、出版社当時の記事や、創作文芸プレビューサイトの記事なんかが出てきた。
「今年最後の花見」https://t2aki.doncha.net/?id=986804613
「そろそろ忙しいなぁ」 https://t2aki.doncha.net/?id=1019213347
「閉塞」 https://t2aki.doncha.net/?id=1074076631
「創作文芸見本誌会場HappyReading」 https://t2aki.doncha.net/?id=1324111242
今日時点。 「EPUB3::かんたん電子書籍作成」 で580冊ほど作成されてるなぁ。(kindleストアに並んでいるかどうかは不明だけど)
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
電子書籍で起業
そういや。去年の暮れに、会社を辞めることになったので、電子書籍・電子出版で起業、出版社・配信事業をやろうと思うけど、どうだろうという相談を受けた。
数を揃えられるならやりようはあるかも知れないけど、難しいですよと返答。
…でも実際のところ個人事業主レベルの準備用意では無理だと思ってる。
・作家→出版社→取次ぎ流通→書店
・作家→電書屋→プラットフォーム
↑めちゃくちゃ簡略化すると上記。
相談されたのも、作家さんに原稿を依頼して預かって、電子書籍を制作して、プラットフォームに流して販売する。売上の中から、自分のところでマージン各種をいただき、作家さんに印税を支払うというイメージか。
わたしも、自分で実際にiPhone電子書籍アプリを制作してapp storeに並べたり、EPUB3を作れるようにしてKindleストアで販売してみて初めてわかったんだけど、単純な小説であれば
・電子書籍の制作はプログラム知識も不要で、簡単。
・プラットフォーム(app store、Kindleストア)に並べるのも、個人でもできること。
ネットは参入のハードルが低すぎる。
Kindleなど原稿が用意されていれば3分でEPUB3まで作れるし、審査も48時間。原稿からストアに並べるまでたった2日。ちなみに、app store の審査は約2週間かかる
既存の出版社の場合。
【編集制作】本を制作するのはデザイン、校正、校閲などを経て紙印刷の本を作り上げる。
【営業】取次ぎ流通、取次ぎの口座を取得して取次ぎ相手に部数などの交渉をする。
って、このふたつだけでも個人じゃちょっと難しい(ていうか、取次ぎ口座は個人じゃ無理のはず)だから出版社は成り立っている。
テキトーに書いてるけど。底辺エロ出版社とはいえ、20年在籍して編集長なんぞとエラソにふんぞり返ってたので、既存出版社の仕組みはわかってるつもり
でも、電子書籍は両方とも簡単なので、作家がプラットフォームで直接販売することもできる。作家とプラットフォームの間に入る事ができるのは、既存の出版社でブランドが確立されている会社だけだろうと思っている。
・販売促進に宣伝広告をしっかりやる。
・すでに人気作家の本を出版していて実績がある。
・事業を継続している信頼が作家・読者両方にある。
・作家は、ここに預ければ売ってくれる
・読者は、ここのを買ってればハズレはない
最初からこんな条件揃うわけがない。知名度のある有名作家が知り合いで、電子書籍用に原稿を預けてくれることになった、なんてことがあれば少しは違うだろうけど。
ぎりぎり、作家側のメリットとして、ここに原稿を預ければ各プラットフォーム全部に流してくれて、各々違ってる料率をまとめてくれて「面倒がない」というところをアピールするぐらい。だろうなあ。
当人は実用書ハウツーもの書籍の編集者ということもあってか、作家さん(小説家・漫画家)には連絡をきちんと、こまかく取る、打ち合わせた結果の約束事は守る、といった認識が希薄。作家さん相手の仕事は向いてない。せめて自分のフィールドの実用書ハウツーものから始めてみてはどうかと、最後に付け加えておいた。
一冊あたりの制作費や、マージン、販売価格など細かく計算しなきゃいけないことがたくさんある。会社を立ち上げるなら今年早々ということだったけど、どうなったかなあ。仲介・コーディネート編集以外の請負仕事があるなら回してくださいね!(電子書籍制作なら格安・ダウンロードサイト構築はそれなりにご相談)
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
kindle EPUB3作成のまとめ1
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
2012年大晦日。
今年はいろいろあったような、何もなかったようなハンパな年だったかなあ。この歳になってのんきなもんだ。
わたしのトピックとしては、今年は2年ぐらい前から騒いでた、待望の電子書籍元年だろう。
・iPhoneアプリの電子書籍をリリース
・Kindleで電子書籍をリリース
iPhoneのアプリは苦戦もいいとこで継続するのが微妙な感じ。でも、やっときたkindleに関してはどんどん新規に登録する。これはどうにかできそうだ。
また、kindleがくる・EPUB3の策定が進んだということもあって、真面目に調べものをしてEPUB3で電子書籍を作れるページを公開。そうしたら、電子書籍制作に関する問い合わせなどもいただいているので、そっちも繋いでいきたい。
EPUB3::かんたん電子書籍作成
ただ、電子書籍だぁ!で良いことばかりじゃなかった。某配信事業者というかネットベンチャーの外資に関わって、あれこれ約束など反故にされた結果、作家さん漫画家さんに迷惑をかけることになってしまった。猛省。来年は安易に信用しないように気をつける。
正直、フリーランスといってもただの無職同然。来年も継続して食っていけるレベルじゃないので、いろんなことに首と手と足をつっこんで種まきしていこう。(でも、ダンピングの泥沼となってるHTMLコーディングの個人受けは厳しいなあ。せめて業務委託や請負の、契約がかっちりとした形で、サイト制作・運用のお手伝い系仕事を探そう)
健康第一。来年2013年は良い年でありますように!
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EPUB3で縦書き小説を作成、Kindleストアに並べるならこちらが簡単
→ EPUB3::かんたん電子書籍作成
iPhoneで読む小説同人誌(おまけコンテンツもあります)
→ iPhone電子書籍アプリ「小説同人誌Select」
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
Kindleストアの販売力
今年2012年10月25日に待望のKindleストアがオープンして、KDP(Kindle Direct Publishing)=セルフパブリッシングで本を販売。今年もそろそろ終わりなので、2ヶ月ちょっとだけど振り返り。
結論からいうと、アマゾン、Kindleストアは売れる。
NDA(利用規約に守秘義務)があるので、はっきりした数字は上げないけど、さすがAmazonの販売力というか、ぽつぽつ売れ続ける。コミケやコミティア、文学フリマなどの即売会に持っていって売るときのような瞬発力はないけど、こうしていつでも手に入れられるところに並べておくことの大事さを実感。電子書籍、ダウンロード販売のメリットはここにあるなぁ。この約2ヶ月で、一回のイベント売り以上に出ている。
KDP・個人作家の本がアマゾンからのレコメンドメールのおすすめ商品の中に入ってたりするし、売れ筋商品になるとアマゾンがリスティング出稿(検索結果に出る広告)してくれる。微妙なカテゴリランキング(中国文芸とかだったりする)も含めていろんなケースで表出が望める。そりゃ何もないapp storeとは雲泥の差。
配信事業者に聞いたところ。
app storeはランキング10に入れば一発ある。けれど、それっきりで持続性がない。売れるのはランキングに入った月だけで、ランキングから外れたらそれっきり。次々といろんなタイトルがリリースされるので、ランキングに入り続けるのは不可能。
koboとgoogle playは(つい最近始まったばかりの)kindleストアの40分の1も売れないらしい(koboに関しては、今日時点でやっとAndroidアプリが出たところなので、勝負はこれから)
どちらのケースも伝聞でたしかなデータを見せてもらったわけではない(そりゃ契約で、販売データなど余計なことは漏らすなよと言われてるはずだし)でも、KDPの簡単さを考えると、来年もKindleストア中心でいいかな
(表紙画像と校正済み本文テキストがあれば、https://books.doncha.net/epub/ でEPUB3を作って登録まで15分もかからない)
年末年始の休みで動きがどうなるか楽しみ半分不安半分。
ウチの場合、紙印刷製本版の同人誌で、品切れ絶版の本を電子書籍にしてKindleストアに並べてます。読みのがしたよ・他のも読みたいよ、と思ったらぜひぜひよろしくお願いします!
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