モリサワMCBookからEPUBに
モリサワのMCBookという電子書籍ソリューションパック
https://www.morisawa.co.jp/biz/products/mcbook/
大雑把に、InDesignなどメジャーな組版ソフトで作ったデータを変換、編集してapp storeなどの電子書籍アプリにするもの。
モリサワのフォントが使える、印刷現場・DTPではメジャーなモリサワということで発表当時話題になったのを覚えている。使ってみたい!と思ったら法人契約限定だったのでがっかりした記憶。
ところが iBookstoreオープンでAppStoreのブックカテゴリは、単純な電子書籍アプリは審査が通らなくなってしまった。 『AppStoreの電子書籍アプリは終了』 (2013/3/31)
AppStoreでアプリとして販売していた電子書籍をEPUB3にしてkindleやiBookstore、googleで販売、という流れに。(AppStoreで電子書籍アプリを販売している版元、制作会社はもちろん、電子書籍を作るためのアプリを制作販売しているところもダメージが大きいよなあ)
モリサワのMCBookはEPUBも出力できる。
…んだけど、わたしが預かったデータはEPUBチェックであっさりエラー。バージョンによるかもしれない。こいつをEPUBチェックを通るようにして、目次などナビゲーション文書をつける。
バラして中を見ると、構成は約束通りのEPUBパッケージ。問題が以下の3点。
・toc.ncxがあって、プロパティのnavを指定されているnav.xhtmlがある。ところが、このナビゲーション文書、本文の最初のページが記述されているだけで目次の役に立っていない。
・本文中にエラーになるタグがある。
・スタイルシートでモリサワのフォントが指定されいている。
ナビゲーション文書の作り直し。
content.opfはxmlなので、Data::Dumperで確認して、XML::Simpleで解析。フォルダ構成を見直して、再構築する。(「理解・分解・再構築」(c)鋼の錬金術師) 改めてcontent.opfを作り直して、nav.xhtmlは新規に作成。
XMLの長所・利点というか、こういう標準化された記述方式は、アクセス、理解が早くて助かった。
本文中のエラータグは適当にストリップ。ルビ関係のタグ程度だった。
モリサワのフォント指定は、明朝・ゴチックに太字をまじえてそれっぽく指定しなおし(ビミョーな感じ、というかやっぱり違和感。こればかりはしょうがない)
上記3点を直して、EPUBチェックもValidで通るようにした。
落とし穴だったのがkindlegenで警告。
max-width max-height
column-width -webkit-column-width
の4つのCSSプロパティは対応してないから削除した、と。
なんか見た目、変だよなあと思ってた扉ページや小見出し、画像表示などの部分かな。kindlegenが削除したのはレイアウトがらみのプロパティ。目視チェックで確認しながら、それっぽく指定しなおした。
別の話。AppStoreの件はかなり深刻らしく、廃業・事業変更なんて話まであるらしい…て、それだけAppStoreでの売り上げがよかったってことだなあ
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
kindleの目次が相変わらず。
アクセスログを眺めると、いまだに「kindle 目次」あたりの検索ワードで当サイトへの着地が多い。電子書籍制作に関するノウハウ系はもう収束・終息かと思ってたけど、そうでもないっぽい。
InDesign(今日時点のクラウド版)の吐き出すEPUB3だと目次が使えない、という話を最近聞いて中を見せてもらった。
EPUBチェックではエラーはない。でも、kindlegenでmobiファイルに変換してプレビューワで確認すると「目次」と「最初のページ」が定義されていない。最初のページは(現時点だと)指定がなくてもビューワーが適当適切なページを開いてくれる。でも、目次が指定されていないと、KDPの審査ではねられる(たぶん)
てことで、InDesignが吐き出したEPUB3で、目次を使えるようにした時のメモ書き。
やったことは以下↓
OEBPSフォルダのファイルの中から toc.ncx を削除。
content.opfの
・toc.ncx の記述を削除
・spine の toc=ncx を削除
・spineに、idref=toc (toc.xhtml)を追加
toc.xhtmlに
・landmarksを追加(カバーや目次、本文開始ページなどの指定)
細かいことをいうと。
content.opfのmanifest部
・プロパティのnavを指定されているのは toc.xhtml
…なのに、InDesignの吐き出すEPUBでは、toc.xhtml には目次などを指定するlandmarks部がない=カバーや目次、本文開始がわからない。かといって、toc.ncxがnavに指定されていないのでビューワーは目次がわからない。
目次(ナビゲーション)を使うためには最低限
・content.opfのmanifest部で property に navを指定されたxhtmlファイルが必要。
・navを指定されたxhtmlファイルには目次とランドマークの記述が必要。
この2点。
EPUBチェックに通っても、kindleではねられたんじゃ意味がない。プレビューワーの本の情報をチェックして要確認。
Sigilにしても、InDesignにしても、それなりの評価のあるツールもEPUB2でいいんじゃね?ぐらいにしか考えてないように見える。
日本語の縦書きに対応したのはEPUB3から。欧米の横文字はEPUB2あたりでいいんだろうけど、こっちは困る。なまじ定評のあるツールなだけにそれなりに広く使われていて、いい迷惑だ。
toc.ncxを吐き出すようなツールはとっとと退場してくれ。
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
word→textからルビをタグに
WORDのルビに関する小ネタ。
ワード文書を直接読み込んで、電子書籍・EPUB3に変換するソフトもあるみたいだけど、一度プレーンテキストに吐き出しておいた方が何かと使い勝手がいい・使い回しが効く。ただ、ワード文書をプレーンテキストに保存すると、文字装飾やレイアウト情報がすっ飛んでしまう。テキストなので当然といえば当然。
でも、せめてルビは残したいのが人情というもの。
ワードの文書をプレーンテキストに保存すると、
・般若心経(はんにゃしんぎょう)
・超新星(スーパーノヴア)
てな感じ。ルビ対象の文字に続けて半角のカッコの中にルビが入っている。これをEPUB3というかHTMLのタグに変換したい。
以前、何度かこの手のネタで記事に。
『ルビのため perl unicode正規表現』 2013/2/22
『WORD文書(docx)をテキストに』 2013/5/29
このあたりで書いたことは 『EPUB3::かんたん電子書籍作成』 に実装、組み込み済みなんだけど、ルビなどはどこからどこまでがルビ対象なのか・特殊なルビなど、見ながら決めたい。
・東京都千代田区(ちよだく)三崎町
だったら「千代田区」に対してルビがつくし、
・BOZE(ボウズ)バンズ
だったら「BOZE」に対してルビがつく。
ということで、ワードからテキストで保存した場合にエディタで開いて校正しながら
・東京都|千代田区(ちよだく)三崎町
と、ルビの開始位置に半角の「|」を入れておいて、後で一括置換する正規表現が以下。
MacのCotEditorで確認。
WINDOWSのEmEditor や sakuraエディタでもイケるっぽい。→上記の書式中「\」を「¥」に置き換える。
といいつつ。ワードのルビ付き文書を、一太郎に読み込ませてルビ情報がそのまま生きていれば、たぶんそれがワードからEPUB3への一番簡単な方法だと思う
[08/15 14:51:11] 追記。
元ネタ、というか発端はこちら
[08/15 18:03:46] 追記。
https://hirakun.blog57.fc2.com/blog-entry-214.html
↑こちらはルビにタグをつけるワードのマクロを作成・公開されてます。
マクロがわかればこっちのが便利だ。感謝!
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» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
電子書籍の手売り
同人誌即売会と同じく、電子書籍を対面販売・手売りというのは2010年頃に電書フリマというのがあった。
机には見本があって、欲しい本をいうと、登録画面の立ち上がっているノートパソコンにメールアドレスを入力。するとメールアドレスにダウンロードURLが送られてくる、という仕組み。
(https://d.hatena.ne.jp/mirai-contents/20100708/1278601092 このあたりだけど、今は活動休止かな? )
購入した電子書籍(当時はPDF)には購入者のメールアドレスが埋め込まれる。所有欲に対するちょっとした解答、コピー流出に対するちょっとした防御策(特にこだわりがなければ、電子書籍をその場でメール添付して送る、メモリにコピーしてブツを渡す、というのも全然OKだ)
いま、kindleストアやiBookstore、GooglePlayBooksがオープンした状況。それでもイベントなどで電子書籍を直接手売りするのは。
・内容的にkindleストアなどが扱ってくれない(これ、同人誌の成り立ちでもあるなあ。TPPでなにかとかしましい二次創作系などがこっちか)
・イベントはそもそも「本を売り買いする場所」で、一般のかたの購入意欲が高い。
・交流とまで行かなくても文字通り対面で顔の見えるやりとりができる。
・Amazonやibooksの会員でなくても購入できる・してもらえる。
(…って、最後の以外は電子書籍に限った話じゃなく同人誌即売会の良いところ、だ。それを電子書籍にも適用ってことで)
とはいえ、ハードルも。
・そもそも電子書籍をどうやって読むのかわからない(kindleやiBookならわかる)
・同人誌即売会イベントにくるのは紙の本を買いにくる見にくる(紙の本が好きなひと)
前にも書いたように、同人誌市場は年々伸びている(ちょっと古いけど、2010年700億円→2011年690億円→12年は716億円(予想)の市場規模とのこと)昨日まで開催していた夏コミは3日間総計で59万人を集めた。出版の構造不況で悲鳴があがり続けている一方で、個人の側は同人誌や電子書籍など、道すじ・土俵が整ってきてるんじゃないかな。
同人誌即売会イベントなどに参加して紙の同人誌と同じように電子書籍もありますと周知をはかれば、電子書籍側の売上にも繋がる・幅が広がるように思う。
先日、部屋の片付けをしたところ、あちこちにある同人誌をまとめるとけっこうな冊数・量で驚いた。本棚は溢れていて機能してないし…。版元の本は電子書籍になりつつあるけど、同人誌はまだまだ少ない。即売会イベント会場で電子書籍版があったら(装丁、作りにこだわりがなければ)そっちを選ぶかな。
同人誌も、Amazonと同じように、ひとつのタイトルで紙と電子が並んでるとうれしい。
ちなみに。
以前『創作文芸見本誌会場HappyReading』などにダウンロード販売を仕込んだときのメモ。paypalを使った電子書籍のダウンロード販売の方法は以下。
『paypal と 電子書籍のダウンロード販売(その1)』 (2010/6/20)
『paypal と 電子書籍のダウンロード販売(その2)』 (2010/6/21)
3年程前の記事だけど、まだこれでイケるはず。
[08/13 17:24:07] 追記。
電書フリマでは、PDFだけじゃなくて、当時すでにEPUBも売っていたということでした。
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webでいいじゃんテキスト最強!
WEBで時々みかける「WEBでいいじゃん」「テキスト最強!」
たしかにその通りだと思うけど、「どうせクソになって出るんだから、なに食っても一緒だろ」といってるのと同じ。
e-book、電子書籍と名前をつけられてるんだから「本」でないと困る。
本は、表裏の表紙があって、背表紙があって、本を開くと文字・文章が紙に印刷されていて、それを目で追って読むもの。
電子書籍は、専用端末・専用アプリでテキストが表示されていて、それを目で追って読むもの。
ということにしておいて欲しい。
なんでなのか、うまく説明できないので、話をいきなり飛ばすけど。
わたしは、テオ・アンゲロプロスという監督の映画が好きだ。『旅芸人の記録』『アレクサンダー大王』『霧の中の風景』『ユリシーズの瞳』『永遠と一日』そして何より『シテール島への船出』
どれもこれも3時間当たり前という映画で、ストーリーは、たとえば耄碌した恍惚頑固爺が帰ってきて放浪するだけ。何が面白いのかよくわからない。学生時代に初めて観てハマった『旅芸人の記録』。この初めての時、DVDを借りてウチのテレビで流したとしたら、途中で投げてた。
映画館だからハマれたのだ。
スクリーンと一対一を強要されて、スクリーンの中の世界に目が釘付けとなり、緊張感にいちいち鳥肌が立った。スクリーンの中の時間と空気を押しつけられる快感というか。
テオ・アンゲロプロス特集の「ユリシーズの瞳」を観てきた。ラストは腰が抜けた。話はなんだかよくわからないけど、画面から目が離せず、妙な説得力と凄みがあった。話がよくわからんのに魅入られて面白いって、毎度のアンゲロプロスだった。
映画が初めて記録を始めた頃の、未現像のまま消息不明になっている幻のフィルム。それは最初の眼差し、無垢な眼差し。それを探す旅の物語。とか。
戦火の街。霧の日だけ、街が元の姿になる。視界がない霧の日は狙撃兵がいないから。街に出た人びとは、深い霧の中、音楽、芝居、ダンスを楽しむ。とか。
個々の状況にいちいち鳥肌がたって、画面がいちいち絵になってる。特に霧に覆われるサラエボのシーンは一瞬たりとも目が離せない気が抜けない緊張感。ひとにはなかなか勧められないんだけど、3時間があっという間だった。いや痺れた。
本を読むというのも同じだと思う(体験なんていうと大げさか)
本を読んでいるときは本と一対一、本を読むことに集中したい。それを提供するのが電子書籍というパッケージ・かたち。
今さらだけど。
電子書籍でパッケージされたことで、デジタルデータが商売になるというのもあるし、それ以上に、本と一対一になる環境が提供されたというのが嬉しい。
となると、たぶん、わたしが求めるのは専用端末なんだろうなあ。iPhoneアプリで読むより、KindlePWで読んでいるときの方が本を読んでる実感。プライベートでも仕事でも電子書籍がらみが多いので、普及を考えるとスマホで読んでもらった方がいいんだろうけど…。
» ローカル環境で電子書籍を作る、Macアプリ・Windows版ツール 「かんたんEPUB3作成easy_epub」
電子書籍の中抜き
噂話のヨタ話。データも根拠もない伝聞と思いつきの垂れ流しなのであしからず。(ネタ元は、中小零細版元、電子書籍専門の零細版元、電子書籍も始めた零細版元、フリーのライター、デザイナーとの雑談。印刷会社系・ネットベンチャー系の電子書籍取次ぎ主催交流会噂話の又聞きとか)
電子書籍オリジナルで商売をしている中小零細版元の売上は好転することなく厳しい状態が続いているらしい。業務縮小や人員削減なんて陰気な話がひそひそと。
・大手版元の本格参入で先行者利益(先発優位)が吹っ飛んだ。
・低価格帯はそれこそアプリと同じ競争激化、有象無象に埋もれてしまった。
・同じランキングでも、去年暮れから今年頭までと、今年の春以降ではダウンロード数(購入数)がまるで違って激減した。
上記の雑談は、
・紙の資産がある・ブランド力のある大手既存版元はやはり強いということ。
・コンテンツ制作にあたって、実売だけだと金が回らないということ。
この2点ということか。
電子書籍商売は難しいんだなあ、というのは以前にもヨタ話を。
『電子書籍は版元には厳しいらしい』 (2013/4/28)
中小で少人数とはいえ、事務所の家賃光熱費、人件費もろもろの固定費を考えると、定価99円とか190円、290円の本を最低でも何冊売らなきゃいけないのか、だ。
紙印刷のベストセラーだと1タイトルで、ン10万部なんて部数が出るけど、電子書籍のダウンロード数ってどうなんだろう(検索すると https://bestseller.digital-dokusho.jp/digital/index.html 10万部以上というケースもあるのか)そのベストセラーを出すまで辛抱がきくか・体力があるかどうか。
電子書籍で、取次ぎや出版社を「中抜き」ということが話題になったけど、別の意味の中抜き現象かもしれない。
現状うまく転がりそうなのは、紙資産のある既存版元か、売上が死活問題にならない個人レベル。この二極化で中抜きされるのは電子書籍専門の中小零細企業ということだったか。
(この手の、市場がどーした売上がどーたら、という話題に過剰反応するのはネット屋ばかりに見えるのは、危機感を募らせてるからかなあ、と邪推)
だらだら、つらつら書いてみたけど。
「中抜き」って市場が確立されてから出る言葉。その市場は去年暮れにやっと立ち上がったばかりで、まだ1年もたっていない。現状トップのKindleストアの売上がどのぐらい伸びるかで市場のいろいろが決まってくるんだろうなぁ。
ネットのスピード感とかだと、もう10ヶ月。でも、まだ10ヶ月。
我が家は地道に続けて行こう。
[08/08 20:05:43] 追記。
電子書籍で金になりそう・ひと儲けなどと、参入してきた安直なハイエナ系のネット企業は退場いただく。ということでいえば、わりと正しい淘汰のプロセスに入ったのかな、とも言える、かも。
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