切れ味

2005/8/29 [23:18:48] (月) 天気

昨日ブックオフで買った結城昌治が凄い。1988年初版の「エリ子、十六歳の夏」。初版年度からするともう結城昌治、後期・晩年の作品だ。タイトルを見てなんじゃらほいとパラパラっとめくって鳥肌だった。買う気がなかったのに、レジ直行だ。


 声をかけられた。

 振り返ると、見憶えのある顔が立っていた。十年ぶりくらいに会う顔だった。もし職業が変わっていないとすれば警察官で、うだつが上がらないでいるならどこかの署の平刑事だった。

 わたしは、警察を辞めてから二十年あまり経っていた。


この冒頭の文章に痺れてしまった。ていうか結城昌治の文章が好きで今まで読んできた。この、恐らく晩年の文章はさらに磨きがかかってキレがすげーっす。どこを取ってもメモっておきたくなる文章なのだ。短いセンテンスのたたみかけと間の取り方というか、文章が息をしてるというか、読んでいてふと呆然とする瞬間があるほどだ。この作品のキャラに関しては、年寄りが無理やり若者に合わせてボロを出してるところが散見するけど、文章の凄みでぐいぐいとひきこまれる。

こういうものを読むと、文章を読むことの至福を得られる。本を読まないひとが本当に可哀相に思えてくる、というと宗教がかってしまうか。

角川も講談社も、こんな傑作をいつまでも絶版にしてるんじゃねえぞっ。


エリ子、十六歳の夏

『エリ子、十六歳の夏』

結城 昌治

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