ひまつぶし雑記帖

珍本奇本に興味はない

2013/9/2 [09:30:20] (月) 天気

小学生の頃から小説が好きな一読者。本、小説の読み方としてはキャラで読むタイプ。キャラに説得力があるものは、世界観が細部までしっかり作り込まれている。だから、キャラの一言一言、行動がいちいち「腑に落ちる」
登場人物がどんな親に育てられてきたのか、どんな生活を(小説には出ていないところで)過ごしていたのかを感じさせてくれるから感情移入させられる。
最近でいえば、スティーブン・キングや、宮部みゆきなど。おいおいいったいいつ話が始まるんだと延々とキャラの日常が書かれていたり、押し入れに入ってるアルバムの痛み具合だけで祖母のことまでわかったり、見開きいれて3ページぐらいしか登場しないキャラがリトルリーグの補欠でようやく次の試合に出場予定だったり。
極端なことをいってしまうとストーリーは必要ない。世界とキャラ各々がストーリー。

作品でいうと、指輪物語やハイペリオン。
世界もキャラも細部まで作り込まれているから力強い。わたしの読み方、キャラ読みで、文句のつけようのない傑作。

昨日、映画『ホビット』を観ていてしみじみつくづく改めて感じた。

KDPや同人誌でよく言われる「KDPだからこそ」「同人だからこそ」という言い方で珍本奇本が取り上げられることが多くて(たまたまKDPがらみでよく目にするのだけかもしれないけど)うんざりしていた。いちいち「〜だから」という言い訳が必要な珍本奇本を読みたいとは思わない。
「へー、こんな本があるのか」という本に対する面白みがあるのは理解するし、実際その理由で買ったりもしている。でもそれは中身の小説、フィクションに対する評価じゃない。

もしも商業誌レベルというものがあるなら、「〜だからこそ」という前提がひとつでも少ないものが、そのレベルということだろう。

言葉遊びをすると。『指輪物語』は言い訳無用の強靭さ。「『指輪物語』だからこそ」読みたいのだ。

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ひとくくりにしないでくれ

2013/7/29 [10:17:38] (月) 天気

クラスタというのか、ちょっと前はレイヤーとかセグメントとか言ってたような気がする。属性とかカテゴライズとかの話題は賑やかだ。昭和の昔から団塊の世代vsシラケ世代など世代でくくるのは定番だし、血液型や星座も同じようなもんだろう。

ブログでもtwitterなどのSNSでも、属性でくくって一般化・概念化して、事件やひとについての論考…というか、溢れかえるしたり顔の数々。

エロ本出版社の頃ずいぶん痛い目にあった。
宮崎事件というのがあった。テレビや新聞、雑誌が連日報道、編集部にアポもなく時間関係なく押しかけてくる(最近知った言葉でいうとメディアスクラムとかいうらしい)

ロリコンのひとくくりに敷衍され、本が出せなくなりほぼ1年干上がった。
どうしてこんな事件が起こったのか、なぜ彼はこんなことをしたのか、わからないと不安なので、理由をさがす。それはいいんだけど、彼個人の問題じゃなかったか。「ロリコン」というひとくくりでいいのか。

てなことで憤慨したものだ。
当時、マンガ家たちと、何か事件があるたびに「お願いですから、この犯人の部屋から、妙な雑誌、コミックスが出てきませんように」


属性でくくって遊ぶのは面白いので自分もネタでやるけど、危ないと思う。
群れ・村に不安なことがあって、理解できないと、ねつ造してでも原因を作って安心したいというのがあるらしい。原因としてひとくくりにされた側はたまったもんじゃない。

人間は群れ・村社会に生きるので、必ず何かに属することになる。この手のことは本屋さんにいって、「社会学」「民俗学」「文化人類学」などと書かれた棚の前にいって、適当に本を引っ張り出して読めば必ず書いてあること。


よく言われるように、ロバート・B・パーカーの小説はマッチョな俗物だと思う。

『約束の地』
一般論はやめてくれ。それが、女性全員の問題なのか、ある特定の女の問題であるのか、おれは知らない。ただ、おれにわかっているのは、それが、きみの悩みの種の一つであるかもしれない、ということだ。そうであれば、解決できる。なにかを知っている、ということと、なにかを感じてそのように行動する、つまり、そうと信じることとは、別問題なんだ

 

『レイチェル・ウォレスを捜せ』
「おまえたち、だと?」私が言った。「おれたち?おれは、おれとおまえのことについて話してるんだ。おれたちやおまえたちについて話そうとしているんじゃない」

 

個別の問題を、一般化・概念化せず、一対一で向き合うところが「マッチョ」で「かっちょええ」んだ。



[07/29 10:51:16]


↑現実に起こりうる。シャレになってないよなあ。

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ネット・電子書籍のポジショントーク

2013/6/3 [11:20:53] (月) 天気

違和感があるので、未消化のままメモにしておこう。

こんな記事が話題になった。
「正直言って本を読まない人を見下している」http://anond.hatelabo.jp/20130528133141

をー!まさに我が意を得たり、膝をぽんとひとつ打つところ。
100年前から、この雑記帖に書いてるように、わたしはひとの足下を、読んできた本の冊数ではかっている。
本を10冊しか読んでない人間は10000冊読んでいる人間に、どう逆立ちしても勝てない、ひととしての階梯が違っていると思っている。かんべむさしが大学時代懐古エッセイで似たようなことを書いていた(ちなみに、わたし自身は冊数的に底辺レベルであることは自覚している)

ところが、この記事、なんか違う。学びだとか、知識だとかいう話になっている。

「本」というのは「フィクション、創作」のことで、「本を読む」ということは「フィクション、創作の作品世界に感情移入して・想像して、そして体験すること」

実用書やハウツー本、働き方の本、自己啓発本など、この手の本は誰が書いても同じようなもの。
実用書などはノウハウの伝授みたいなもので別にあなたが・わたしが書いたものである必要はない。誰もがたどり着く普遍的・当たり前の「解」が書いてあるだけだろう。
働き方や自己啓発本は、ほとんど余計なお世話で何を根拠に言ってるのか不明、おのれの成功体験の押しつけでしかないだろう。それこそ。記事にもあるように、ラッセルやソシュール、カントを、一次資料を読むべき。お手軽な成功体験などお手軽なりのものだ。

こんなものを10冊読むヒマがあったら小説を1冊読んだ方がよっぽど豊かな経験ができると思っている。わたしにとって「本を読む」というのはこっちのこと。

ネットは短小早漏で、スピードと効率・コスト、んなことが重視される場所。
いわく。早く始めたい、無駄なことはしたくない、手っ取り早く成果が欲しい。

実用書だ自己啓発本、ライフハックばかりが話題になるのも理解できる。そういう話題の著者、関係者たちは、本を売ることだけではなくて、セミナーや講演とセットでナンボの商売というのも理解できる。

なので、「今これが新しい生き方(わたしがなー)」「次にくるのはコレですよ(おれがなー)」というポジショントークで声がでかい。正直、鬱陶しい。見なけりゃいいんだけど、声がでかく発信力があるので(=商売なので当然)ネットをうろついてると目に入ってしまう。

ポジション争いに加わらないと埋没して商売あがったり、だ。

こんなまとめもあった。
「「個人出版」を語り尽くす! 『Amazon Kindleダイレクト出版 完全ガイド』出版記念トークイベントのまとめ、これが勝間無双か!」http://togetter.com/li/511592

個人がメディアになる、んだそうだ。
フィクション、創作もそうなのか?物語、作品というのはそれ単体で成立させるものだ、というのは古い考え方なのかもしれない…なので、良い悪いはわからないけど。ネットで、電子書籍でフィクション作家までがポジショントーク合戦に参戦しているように見えるのはどうなんだ。

んなこと言ってるヒマがあったら新作書けばいいのに、と思う。

ネットとは対極。無駄を積み重ねて初めて虚構世界の構築が可能となる、はず。ポジション争いに加わって肝心の創作はどうなるんだろう。ネットのスピードと創作のスピードは相容れないのでは?
仙人の弟子になったのに庭掃除と雑用ばかり50年「もういい加減、おいらに仙術を教えてくれよ!」「ほらもうできてるよ」ということだよなあ。きっと。


[06/03 14:42:45] 追記。
そういや、昔話。当時、売れ方が爆発した漫画家。
売れない頃、バイトで映画館のもぎり兼売店売り子。「いや、ぼくね、たぶん松田聖子の「青い珊瑚礁」なんか、日本で一番観てますよ」とゲラゲラ笑いながら。「ここ、こうした方がいいのにとかね、このシーンは意味があったのかとかね、後から思えばですよ、そんなこと思ってたかなあ。その時は?くそつまんねえ、でも上映中はやることもないし半分寝てたかな」

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紀伊国屋「ほんのまくら」もどき

2012/9/24 [16:57:53] (月) 天気

創作文芸見本誌会場HappyReadingに企画ページ新設。久しぶり。いや、ここんとこ請負仕事も進んでないし、iPhone電子書籍アプリのiOS6、バグ対応もなしのつぶて。ぼーっとしてると脳みそが腐りそうなので、頭を使わなきゃ!というのが主たる目的。それにはスクリプトいじり。ということで、最近話題だった紀伊国屋書店の企画「本のまくら」をリスペクトとかインスパイアとか、ひらたくパクった。
本のタイトルや著者名を伏せて、本文の冒頭部分をカバーにして陳列する、というもので、小説は冒頭1ページも読めばわかるとか、小説家は書き出しに命をかけるとか。確かに面白い企画で、売り上げも「驚異的に」伸びたらしい。(企画としては面白いと思うけど、「本」はタイトルや装丁、デザインも含めたパッケージ。中身だけ冒頭だけの売り方に諸手をあげて賛成かと言われると、ちょっと違うような気がする。てのはともかく)
image 
http://books.doncha.net/happy-reading/list_tachiyomi.pl
HappyReadingではサークルさん(作者さん)に、立ち読みのテキストを登録してもらっているので、その冒頭部分10行ほどを並べてみた。自画自賛というか、今日時点で195冊、冊数分だけ、いろんな文章があって面白いなあ、としみじみ。今までも立ち読み用のポップアップはあちこちにつけてるんだけど(ポップアップのために限らず)「クリック」などのアクションはハードルが上がるところ。今回追加したページでは、1ページ内に複数の作品の冒頭部分が読めるので(読むためのアクションを必要としない分)気楽になった。どんな話なのか、冒頭だけでなんとなく想像がつくし、いろんな作品が一ページに並ぶので、自分好みの作品を見つけやすくなった印象。本屋で立ち読みするときってこんな感じで、パラパラめくっては次、また次、だったなあ、と。
で、やっぱりここでも問題なのが、WEBの・ブラウザの貧弱な一覧性。紀伊国屋だと本の情報がそれこそ奔流のように飛び込んできてさぞ楽しかろうと。なのに、WEBだとこうやって並べてせいぜい6冊。
表紙ビジュアルなら、↓こうやって195冊を小さくずらーっと並べてもそれなりに見られる。
http://books.doncha.net/happy-reading/simple_list.pl

でも、文章は小さくするわけにもいかず。とりあえず、6冊全部を総入れ替え(再読み込み)するパターンと、一冊ずつ入れ替える(Ajax)パターンをつけた。一度表示してあるものはすぐに再び出てこないように小細工もした。

「今、目の前にあるもの以外のものを見てもらうために」どうするのか、ページを作るのに毎度毎度悶絶するポイントだよなあ。ううううむ。


[11/19 16:41:14] 追記。創作文芸同人の小説を電子書籍で販売中

アマゾンkindleストアに並べた電子書籍のリスト
手前味噌だけど、ホラーや青春もの、癒しの物語などオススメできます。短編だと100円からあるので、気楽に読んでみてやってください。


こちらはiPhone電子書籍アプリ 「小説同人誌Select」
https://itunes.apple.com/jp/app/id546230414?mt=8
小説同人誌Selectというこのアプリは無料で、中に有料の小説が収録されてます。無料サンプルもあるので、まずは立ち読み感覚でダウンロードして、気に入ったらその作品を購入してもらえるととてもうれしいです。

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東京国際ブックフェアに

2012/7/8 [12:53:50] (日) 天気

今年で3年連続、東京国際ブックフェアに。文具フェアとか電子書籍エキスポが水曜〜金曜までで、週末の土日はブックフェアだけの開催、と去年までとはちょっと様子が違っていた。
そのせいか、なんだかずいぶん規模が縮小してるように感じたなぁ。去年あたりはたしか電子書籍のブースも盛り上がっていて、版元や書店、製本印刷のブースも賑やか、だった印象。
実際の数字での比較はしてないので、あくまでも印象、だけど。
それでも、国書刊行会や河出書房は、普段、街の本屋じゃ並んでいない本がずらーっと、壮観。国書刊行会には、ディッシュや、ベスター、ディレーニイの翻訳ハードカバーなんて、たぶん本屋じゃ売れない変態本があって、数寄もの垂涎、てのは定評がある。今回は山尾悠子作品集を購入。20%OFFじゃなきゃちょっと手が出ない、よなあ。

 
今回はまず国書刊行会で買い物して、後は適当に流す、だったんで、この購入は良かったんだけど、河出書房の翻訳ものも予想外の品揃え。
恩田陸の常野物語シリーズの元?になってる、ゼナ・ヘンダースンのピープルシリーズ「ページをめくれば」とか、フリッツ・ライバーの「骨のダイスを転がそう」を収録した短編集「跳躍者の時空」、ベスターの短編集にイガーンなどなど、 奇想コレクション シリーズの充実には驚いた。
来年、まだ東京国際ブックフェアがあったら、次は河出書房から行く。 

その後、やはり東京国際ブックフェアにきていた知り合いと合流、秋葉原で飲み。いろいろ、お話が本当に楽しかったです。話の内容については内緒。

そういや、今週、火曜水曜と飲んで、土曜も飲んで。重なるときってあるんだなあ。

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私立文系の甲斐性無し

2012/6/22 [11:23:57] (金) 天気

いや、甲斐性無しは自分のことなんだけど、テキトーにカテゴライズしないと寂しいので私立文系を使わせてもらった。すまん。

このブログの amazonコンテナをajax取得にしたこともあって、思いつくところに埋め込んでみた。1998年からなので、ほぼ14年分で2400記事ほどをざっと眺めたところ。
技術的なネタはその時々、1年も経つと古くなっていてamazonを見ても該当するようなものはなくなっている。でも小説、結城昌治や星新一、司馬遼太郎なんてのは、まるで古びない。タイトルを見るだけでいちいち感動が蘇り、読んだ当時のことまで思い出す。映画も同じ。

今回ブログをいじっていて、もっとたくさん小説を読まないといけないし、もっとたくさん映画を観なきゃいけないなあ、と改めて思った。もう残りを勘定しなきゃいけない歳だ。
使い古された言葉だけど、フィクションは疑似体験、世界を経験することになる。フィクションを摂取したところで生活が潤うことはないけど、人生は豊かになるのだ。(先人の言葉に、衣食足りて礼節を知る、というのがあるけど、なかったことにしておく)
甲斐性無しでもそれなりにやっていける源泉がここにある。
image 
コンピュータが使われるようになってインターネッツに覆われて、いろんなものが身もふたもなくなった。性格や病気はヒトゲノムとか脳内物質で解明できる。ボイジャーは太陽系を出て外宇宙を探査する。今までわからなかったものに、名前がつくラベルがつく。語りえざるもの、なんて悠長なことを言ってるヒマもない。誰もいない樹海の中、なんてところはなくなっていく。

恩田陸の「夢違」じゃないけど、今まで見えなかったものが見えるようになり、聞こえなかったものが聞こえるようになり、名前がなかったものに名前がつく。
それでも、フィクションは作られていくんだから、アミノ酸なみに、人間が生きていくために必須の成分。てことで、やっぱりたくさん小説を読まなきゃいけないんだな。

--------
「私、例えばね、日本人みんなが幽霊という存在に心から納得してその存在を信じたら、きっと幽霊も可視化するようになるんじゃないかと思うんですよ」
「ほう」
鎌田が感心したような声を出した。
「夢札の場合、見えないものが見えるようになってしまった。夢って存在するんだ、みんなの意識に共通点があるんだと納得して、それが常識になってしまうと、それ以外の見えないものも存在して不思議ではないと考えるようになるんじゃないでしょうか」

 

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