ibooks新刊!『水に咲く花』

『水に咲く花』(日野裕太郎・ハルノブ)[iBooks版]
kindle版『水に咲く花』https://t2aki.doncha.net/?id=1385516659 と同じです。
文庫本サイズ(39字x18行)で42ページほどのファンタジー中編です。
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羽は広がり、次第に姿を変える。
肩胛骨を芯に、産毛に似るという羽は菌糸のように根づくのだ。羽はかたちを変え、やがて大輪の薔薇が咲くことになる。身体中に。全身の皮膚という皮膚に。
薔薇は広がり——全身を埋め尽くすと、今度は鱗に変わる。
変容だ。
患者は水の住人になるのだ。彼らは遠く離れた塩の湖に住む資格を得るのである。
彼らは陸ではうまく呼吸ができなくなっていく。あえぎ喘鳴をくり返すころ、脇腹に亀裂が生じる。亀裂はえらになり、口腔と肺での呼吸機能はすみやかに失われる。彼らは水中でのみ呼吸が可能になり、人語が曖昧になるのだ。
肺が機能を失い、声帯が瞬く間にも衰退する。
発音は聞き取りづらく、語るものは言語とはほど遠いものになる。旋律に似て、陸の生きものには鼻歌に聞こえるようになるという。
塩水で暮らすものとなりながら、陸を恋慕って彼らは浅い岸辺を往復するそうだ。その場から離れ難く、延々と波打ち際にとどまろうとする——陸に可能な限り近い場所を漂い、彼らは歌い続けるとも聞く。
僕はコリンを殺したら、ノイノイに会いに湖に行く——その夢想は、何故だかとてもやさしかった。
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Mac版iBooksのスクリーンショット。
最終ページにはkindleなどと同じく評価やソーシャルボタンがついています。
※ kindleと違って、同じ著者の作品が並ぶのがありがたいなあ。
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