ひまつぶし雑記帖

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【昭和懐古】編集者の仕事

2013/4/29 [19:34:58] (月) 天気

1984年〜2004年まで20年、底辺エロ出版社で編集者として仕事をしていた。10年前の話。
「SMセレクト」というマニア雑誌からはじめてマンガ部門の立ち上げに関わり、その後漫画部門の編集長となってエラソにしていた。

グラビア雑誌と漫画は別モノ。
グラビア雑誌はカメラマンやモデルなどを編集者が現場監督しながら使って作り上げる工業。
漫画は漫画家とじっくりつき合って単行本を出すまで持って行く農業。
「SMセレクト」は、雑誌のつくり自体はグラビア、イラスト、小説、記事、漫画と総合雑誌。ここで撮影やレイアウト、原稿打ち合わせなどなど、たぶんすべてやったので、グラビア雑誌と漫画雑誌の違いについての実感は合っていると思う


漫画の場合、編集者の仕事は「新人のデビュー」

この一点。
同時に編集者としての快感も「新人のデビュー」につきる。
一ツ橋系某社の先輩と「新人賞募集のない雑誌なんて、みずから存在理由を否定してるよね」という話になって嬉しかった記憶がある。

「こんな絵じゃ売れないぞ」「話がなにもないじゃないか」などと上や営業からいちゃもんつけられてても、こいつイケると思った漫画家さんに雑誌掲載を依頼し続けて、初の単行本でちゃんと売れてくれたり、他社からぜひ連絡先を教えてくれという問い合わせがあったりすると、おれさまの勝ちだった。

こいつはイケるという判断。

20年の間に、ン十人の持ち込み・新人賞応募を見てきた。
例外なく最初に「どんな漫画が好きなの?」「どんな漫画が描きたいの?」という質問を投げた。
「漫画が描きたい」「こんな話を描きたい」「この先生のような漫画を描きたい」「自分はこれしかない」という持ち込みの新人は形になった。
「漫画家になりたいから」と言った新人はひとりも一冊の単行本にもならなかった。

「描きたい」と「なりたい」は似てるけど、まったく違っていた。


会社規模、会社事情というのがある。
しょせん底辺エロ出版社。忙しかった時は、ひとりの編集が雑誌を月に2冊、隔月で1冊、さらにコミックスを3〜5点。ひとりで30人ほどの作家さんを担当していた。

ネタは××、絵はこんな構図、キャラの髪型・眼や身体は、と売れてる雑誌を見て情報を仕入れて、今これが売れてるから参考にすれば、程度のサジェストはしてきたつもり。
でもそれだけ。

営業は当時業界トップだったP誌の作家名などを上げて「どうしてウチで頼まないんだ」と責めた。あほか、である。んなギャラ払えない。そのギャラを払ったら編集費がそれだけで終わってしまう。仮に同じギャラを払うことができたとしても、後追いで同じ雑誌をやったところで、販売ルートという土俵でも差がついている。無理してギャラ払って本を作ったら、セブンイレブンに並べられるんか、と。

なので、わたしはウチ独自の作家、作品を最優先で考えていた。売れセンのテンプレを頼むつもりはさらさらなかった。奇麗ごとではない。生き残るためだ。

原稿をお願いすることにしたら、その後は、彼らの「描きたい」「描いたものが売れて欲しい」という意識・欲求を信用した。

それこそ雑談重視。
(言葉を選ばずに言うと)コイツの趣味は?嗜好は?どこにあるんだろう、とベチャクチャ。ならこういう話に持って行けるしこういう作画になるだろうと、こちらの想像力が試され、相手を誘導する先を決めるのは雑談だった。

そもそも、わたしは30人ほどとつき合っているけど、彼らおのおの朝から晩まで、もしかすると寝てる間も、自分の作品について考えている。どうすれば面白くなるのか、売れるのか。
漫画の場合ペン先から原稿用紙まで5mmもない距離を必死で考えるのだ。

へらへら30人としゃべってる人間がかなうわけがない。なので、一度頼むと決めたら、信用した。
絵で売れる・話で売れる・キャラで売れるなど個々の話はまた別にある。でも、頼むかどうかを決めるのは、「なりたい」新人クンではなくて「描きたい」新人クンだったなあ。


当然、ここに書かれていることは、自分美化がはいる懐古話なので話半分でよろしくお願いしたい。だいたい、こんな悠長な話が通用しなくなったから、初老でフリーターになってるという事実。時代ってのもあります。

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